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シャント手術

腎不全とは?

腎臓は24時間、365日、休むことなく体の老廃物を血液から濾過し尿として排泄しています。その仕事量が減少した状態を腎不全といいます。腎不全では濾過するフィルターが“ざる”のようになってしまい、尿は出ていても肝心の老廃物が体にのこってしまい徐々に老廃物が蓄積されていきます。一線を越えると尿毒症となり、生命を維持することができなくなります。

透析とは?

機能しなくなった腎臓のかわりに体の老廃物を除去する治療が透析治療となります。透析には血液透析と腹膜透析があり、血液透析で行うことが一般的です。週3回、一回4時間程度、体の血液から老廃物を除去します。1分間に200ml前後の血液を透析の機械に預けて濾過し体に戻す作業を4時間ほど継続しなければなりません。患者さんと透析機械との間で血液の出し入れを安定的に行うために患者さん側に作成する出入り口をバスキュラーアクセスと呼びます。

バスキュラーアクセスの種類

大きく3つに分かれます。
  • シャント
  • カテーテル
  • 動脈表在化

血液透析では1分間に200ml程度の血流が必要となるため、心臓から出る“動脈”の血流が必要です。しかし動脈は大事な臓器であるため通常筋肉で守られており、体の表面から深い場所を走行しています。そのため直接針を刺すことが難しく、刺し方が悪いと出血、血腫、動脈瘤などの合併症の原因となります。一回の透析で血液を体から出す場所と機械できれいに濾過した血液を戻す場所と2カ所針を刺す必要があります。週3回の透析を行うと1週間で6カ所、年間に換算すると300カ所以上の穿刺をすることになります。針を刺す医療スタッフ、治療される患者さんも安定した穿刺が出来ないとストレスになることは言うまでもありません。

シャント

自家静脈シャント

ご自身の血管を使用して作成するシャントです。最も一般的であり、バスキュラーアクセスの約9割は自家静脈シャントです。動脈と皮膚の表面を走行している静脈(普段採血などする血管)を手術でつなげることで動脈の勢いがいい血流が静脈に流れるようになります。

人工血管シャント

人工血管シャント

ご自身の血管(静脈)が廃絶している場合は前述の自家静脈シャントは出来ません。年間にして300カ所以上針を刺す必要がありますので、他の病気で点滴をしたり採血をしたり、場合によってはもともとの血管が細いような患者さんではご自身の血管で作っても針を刺すことが大変になります。そこで表面からは見えない深い部分を走行している血管を利用して人工の血管を皮膚の下に埋め込むシャントを作ります。約7%の患者さんがこの人工血管を使用したシャントで透析をしています。

カテーテル

首の太い血管から心臓のそばまで細い管を挿入し、管から血液を出し入れして透析を行います。1週間前後で入れ替えが必要な短期使用のタイプと、数ヶ月使用ができる長期使用のタイプがあります。管という異物を用いており、管自体が閉塞したり感染を起こしたりしますので長期に使用することは困難です。全身状態が不良でシャントの手術が難しい患者さんやシャントが使用できるまで一時的に使用することが一般的です。約1%の患者さんがカテーテルを使用して透析を行っています。

動脈表在化

動脈表在化

前述のシャント造設を行った場合、心臓へ戻る血流がどうしても増加してしまいます。通常は毎分500~1000ml前後の量が造設前よりも増えます。心臓の予備力で対応していますが、心臓が弱い患者さんでは耐えられないこともあり、シャントを作ることが出来ません。体の深い場所(筋肉の中)を走行している動脈を手術で皮膚の表面に移動することで針を刺すことが出来るようになります。この手術を動脈表在化といいます。約2%の患者さんがこれで透析をしていると言われています。

バスキュラーアクセスのトラブル

年間300回以上の穿刺(血管に針を刺す)や止血(血止め)を行っていると血管が細くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)、膨らんだり(瘤)、感染したり様々な変化が生じます。シャントは造設後3年で7割前後の患者さんがこういったトラブルを起こしますので、定期的なメンテナンスを行い未然にトラブルを回避することが重要となります。バスキュラーアクセスのトラブルは透析治療が出来ないことに直結しますし、かかりつけ医がいないとトラブル時の対処が出来ずにやむを得ず入院治療になることもあります。

シャントカテーテル治療

当院では3ヶ月前後の定期的な検査を勧めています。

体の外から痛みもなく短時間でチェックできる超音波検査をすることで血管が細くなっていたり、血流が減っていたりしていないか確認できます。透析治療を行う上で十分な血流が維持出来ているのかなどの機能的評価を行い機能が低下した時は治療を行い、落ち着いていれば半年前後に検査の間隔を空けます。多くの場合、治療は血管の中に細い管を入れて管の先端についたバルーン(風船)を用いて、細くなった血管を拡張します。日帰りで比較的簡単に治療が可能です。

万が一、完全に詰まって(閉塞)しまった場合でも同様に対応可能です。早ければ早いほど対処は容易になります。今まで使用していたバスキュラーアクセスの温存に努め前述のバルーンを用いた治療を行ったり、外科的に切って治したりすることもあります。どうしても温存できないような場合は作り治すこともありますが、いずれにしても日帰り治療で行います。

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