下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤は、足の静脈が瘤状に膨らんでいる状態を指します。これは、静脈の弁が正常に機能せず、本来であれば下肢から心臓に戻る血液が下肢に逆流してしまうことによって起こります。主な原因としては、立ち仕事、妊娠・出産、遺伝、加齢、肥満、便秘、性別などが挙げられます。逆流した血液が下肢に溜まり、静脈内の圧力が上昇することで様々な症状が出現します。ぼこぼこした見た目だけでなく、足のむくみやだるさ、こむら返り、かゆみやシミなどの皮膚症状を引き起こし、これらの症状は静脈うっ滞症状と言われます。治療法としては、保守的な方法から手術まで幅広い選択肢があります。

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤B 色素沈着

下肢静脈瘤(色素沈着)

下肢静脈瘤(うっ滞性潰瘍)

下肢静脈瘤の治療法

下肢静脈瘤の治療法は、症状や病気の進行状況、患者の希望によって決定されます。一般的な治療法には以下のようなものがあります

弾性ストッキングによる圧迫療法

弾性ストッキングを履くことで、足に適度な圧力を与えて余分な血液が静脈瘤の中に溜まることを予防し、深部静脈への流れを助けます。静脈瘤を根本的に治す治療法ではありませんが、静脈うっ滞症状は圧迫療法でほとんど消失します。お仕事や育児で今は手術が出来ない方やご高齢等で手術を躊躇っている方で静脈うっ滞症状が強い場合は圧迫療法が非常に有効です。静脈瘤自体は命に関わる病気ではありませんので、まずは圧迫療法で経過をみることも一つの手段です。しかし弾性ストッキングが5000円前後と安くはありませんし、毎日着用すると半年弱でサポート力が低下し買い換えが必要になります。数年継続すると手術した費用と変わらなくなるのも事実です。

ストリッピング手術

手術によって静脈瘤を根治的に治療する方法で、静脈を引き抜く手術です。最も歴史があり、確実な治療方法と言えます。原因となっている静脈を取り除くため、当然のごとく再発率は低いです。超音波検査をはじめとした術前の画像診断と治療器具、麻酔の向上・改善により以前から指摘されている出血、血腫、痛みなどはあまり問題になりません。

血管内焼灼術(レーザー)

レーザー光を静脈内に照射して静脈を閉塞させる治療法で、局所麻酔で行われます。針を血管に刺すだけで皮膚を切る必要がないため、傷跡はありません。弁の壊れた静脈の中にレーザーファイバーを入れて血管の内側からレーザー照射による熱で静脈を閉鎖し治療します。当院では静脈に特異的に吸収される波長の最新のレーザー装置を使用しております。レーザーも血管壁に向かって照射されるタイプのファイバーを用いておりますので、治療効果も高く、痛みや出血などの合併症もほとんどありません。

血管内焼灼術(ラジオ波)

レーザー治療と同様に、管の先端にある金属コイルが120℃に熱せられ、その熱により静脈を閉塞させます。治療効果はレーザー治療とほぼ同等です。

血管内塞栓術(グルー治療)

瞬間接着剤と同じ成分のシアノアクリレートという液体を静脈内に注入して血管を閉塞する治療法です。血管を抜き取ったり、加熱したりしないため、針を刺す部分のみの麻酔で治療が可能です。治療直後から日常、運動制限がありません。しかし1割程度に血管内に入れた接着剤による静脈炎やアレルギー反応が出ます。消炎鎮痛剤や抗アレルギー剤の投与で多くの場合は改善します。また比較的新しい治療のため他の治療よりもやや高額となります。

硬化療法

硬化剤を静脈瘤の中に注入して、静脈の内膜に炎症を起こさせ、静脈を閉塞させる治療法です。泡状にすることで治療効果は高まりますが、それでも再発率が高く単独での治療はあまりお勧めできません。他の外科治療と合わせて行うと効果的です。短時間で繰り返し施行可能な治療です。

静脈瘤切除

硬化療法と同様で単独での治療はあまり行いません。他の外科治療と合わせて行うと効果的です。数㎜の小さい傷から静脈を引っ張り出して取り除きます。傷跡は時間とともにほとんど目立たなくなります。膨れた血管ごと取り除くため一時的に青あざのようになりますが、前述の硬化療法よりも早くきれいになります。

これらの治療法の適応やメリット・デメリットは、症状や病気の進行状況、患者の希望によって異なります。治療法を選択する際には、患者と医師が十分な情報を共有し、患者のニーズに合った治療法を選択することが重要です。上記の治療オプションがすべて出来る施設、ドクターを選択することも非常に重要と言えます。血管を専門に診療してきた血管外科医であれば必ず出来ますし、逆に出来ない治療がある施設での治療は再考すべきと言えます。

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